母親とのありふれた時間の大切さと喪失をテーマにした「死んだ母の日展」が10日と「母の日」の11日、東京で開かれる。自らも母親を亡くした東京芸術大の大学院生がアート作品を展示し、オンラインで募った「死別した母への手紙」の公開も予定している。
企画したのは東京都小金井市の中澤希公(きく)さん(23)。14歳のとき、母親の美之(みゆき)さん(当時47)を乳がんで亡くした。その経験をもとに「死んだ母の日展」を3年前から毎年、オンラインで開いてきたが、今回は初めて自身のアート作品14点を披露する。
例えばコップなど遺品の食器から泡が出ては消えていく作品は、大小さまざまな泡の生成と消失から、日常のいとおしさを伝えるもの。棺桶(かんおけ)の中に横たわって、ある家族のたわいない会話の音声を聴くという体験型の作品もある。受け取り方や思い浮かぶものは、鑑賞者にゆだねるという。
中澤さんは制作にあたり、母親との記憶を思い起こしてみたという。
キッチンで振り向きながら、おかえりと言ってくれた。晩ご飯の食卓で学校での出来事を聴いてもらった――。ありふれた日常の会話や場面ばかりが浮かんだ。
「記念写真のように、わざわざ撮らないけど、思い返すのはそういう瞬間の幸せな記憶。その尊さを、いまお母さんがいる人にも気づいてほしい」と話す。
展示会のサブタイトル「すって、はいて、たしかに、そこに」に、その思いを込めた。
自らも中3で死別 母の日に疎外感
自身は中学3年での死別後…